相続税の申告と納税の期限は、被相続人(故人)が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
相続人間の遺産分割協議が整わない場合でも、期限内の申告・納税が必要です。
相続税は法定相続分に基づいて計算され、相続人が単独で申告し、納税することもできます。
しかし、遺産の大半が家や土地などの現物資産の場合、相続税を現金一括で支払うのは大変です。
自己資金から土地の相続税を捻出するのがむずかしい場合は、融資を受けて支払う方法があります。
ただし、融資を受けるには審査があるため、現在の借り入れ額が限度額に達していない方や事業用ローンを期限に遅れずに完済したことがある方などにおすすめの方法です。
◎相続税の融資を受ける方法
一般的に、金融機関から融資を受けるには、土地を担保に入れる必要があります。
また、保証人が必要となることもあります。
事前に、権利書や公図などの土地の情報がわかる書類の準備や保証人となってくれる方を探しましょう。
金融機関は申込者の収入や土地の担保価値などを審査し、審査結果によって借入可能額や金利などの条件が決定します。
融資以外の方法
金融機関から融資が受けられなかったときのために、ほかの選択肢も気になりますよね。
融資以外の対処方法は「延納」と「物納」の2つです。
延納とは、10万円を超える相続税について、金銭で一度に支払うことがむずかしい場合に、年払いで少しずつ税金を支払う方法です。
たとえば、相続財産の75%以上が不動産の場合、最長20年間にわたって分割払いができます。
ただし、延納期間中は通常の相続税に加えて利子税が課せられるため、ご注意ください。
延納する際は、管轄の税務署に延納申請書を提出し、土地などの担保の提供が必要です。
延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保の提供は不要となります。
一方、物納とは、現金の代わりに土地や株などの現物資産を引き渡して税金を支払う方法です。
物納の場合、実際の市場価格よりも低い価格で評価された額で税金を納めることになるため、注意が必要です。
物納するよりも、土地を売却して売却代金で支払ったほうがお得になることもあります。
1.融資を利用するメリット
相続税を支払うために融資を利用すると、延納の利子税よりも金利が低くなる可能性があります。
たとえば、金融機関の金利が年3%、延納にかかる利子税が年7.3%である場合、金融機関から融資を受けて相続税を支払うほうがお得です。
ただし、延納にかかる利子税の利率は、相続財産に占める不動産等の割合や申請する年によって変わることもあるため、申請するときに所轄の税務署に確認しましょう。
また、融資を利用すれば、相続税を支払うために土地を急いで売却しなくて良い点もメリットです。
望ましくない価格で迅速な売却を余儀なくされることなく、余裕を持って相場価格で売却することができます。
2.融資を利用するデメリット
融資を申し込む際は、担保と保証人が必要となる点がデメリットです。
無担保・無保証の融資も存在しますが、数千万円借り入れる場合は、担保と保証人が必須となっている金融機関が多いです。
借り入れる金額が高額だと、保証人となってくれる方を探すのも大変でしょう。
相続税の支払いを目的に融資を申し込むと、審査がきびしくなる可能性もあります。
年収や資産、借入状況、返済履歴など、金融機関から見て信用力のある方でないと審査に通らない可能性があります。
そのため、通常の住宅ローンを借りるよりも審査に時間がかかることもあるため、注意が必要です。
納税期限までに融資を確実に受けられるようにするには、早めに申請しましょう。
万が一融資の審査に通らなかった場合は、期限までに納税するために、短期間で土地を売却しなければならない事態に陥る可能性もあります。
急いで売却しなければならないとなると、足元を見られて希望価格よりも低い価格で売却する可能性が高くなります。
したがって、金融機関の審査に通るか心配な場合は、延納や物納も検討しましょう。
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